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今朝は雨も上がり、空は高く、お天道様もご機嫌だ。
風が強いものの、鳥のさえずりが春を一足先に届けてくれる。

 昨日のブログでは中学生への手紙を記した。
今日は山形から届いた手紙をみなさんに共有したい。

山形にはたくさんお世話になってきた。

3.11後にすぐに被災地に行こうと思った時、
交通手段がないなか、
庄内のお百姓さんたちがしていた支援活動に参加させてもらった。

昨日のブログでも書いた山形新庄の高橋保廣さんは、
私がとっても尊敬するお百姓さんのひとりだ。

今日ご紹介する菅野芳秀さんも、
やっぱり私が尊敬するお百姓さんのお一人。

店を始めた10年も前だろうか。
フェアトレードショップを営んでいたUさんと一緒にご来店された。
大きい体だけでなく
その分厚い手を見て圧倒されたことを覚えている。
土に向き合ってきた人の手だ!

緑の党を発足する三年前、
菅野さんに再会した。

緑の党の経済政策を考えるタタキ台をつくるメンバー5人として、
私も菅野さんも東京駅の喫茶店で集まった。

あの菅野さんと一緒に未来を考えられるなんて
幸運なことだなぁって思った。

集まったメンバーで緑の党の経済の第一指針を何にすべきか、
とそれぞれが述べたとき、びっくりした。

菅野さんも、もう一方も、私も、「国民皆農」 と言ったのである。

打ち合わせなど一切していないのに、三人が同語を発したのだ。

残念ながら緑の党の指針のトップに、
「国民皆農」が来ることはなかったが、
そうした考えを持つ人たちが緑の党の中にいることは、
みなさんにも知っていてほしい。

さてその菅野さんから夜中に届いたメールが
『 農民からの手紙 』。

読んだ瞬間、
これはみなさんにも分かち合いたい、
と思い、ご本人に許可も頂き、ここに転載します。

以下、菅野さんから届いた手紙です。

※ 菅野さんのトークも開催します。
         3/21(土) 13~17:00 脱成長MTG
          「置賜自給圏構想」について
by 菅野芳秀さん


 

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 山形の百姓・菅野芳秀です。ちょこっと、お暇な時にでも下に掲載した「農民からの手紙」をお読みいただければと思い、恥ずかしながらお送りいたします。ちょこっとで、恥ずかしながらですのでお気楽にお読みいただけたらうれしいです。

 

 寒い日が続いている。数日前、友人の百姓が一升瓶を下げて訪ねてきた。いまは冬の盛り、外はマイナスの世界だ。
「熱燗がいいね。」
 いい酒があり、いい友がいて、いい時間が流れていく。やがて彼は懐から封書を取り出し、照れくさそうに私に読んでくれとさしだした。そこには彼の笑顔と一対の、彼がいま精魂を傾けている取り組んでいる世界が書かれていた。以下、彼の承諾を得て、その抜粋を掲載する。ちょっと長いがぜひお読みいただければありがたい。


―農民からの手紙(一)

 「いま、山形県の南部、置賜地方(3市5町)で「置賜自給圏」と名付けられた地域づくりが始まっている。それを「静かな革命」と言った人がいるが、それは大げさだ。そのような大それたことは考えてはいないし、それに、まだスタートラインに着いたばかりなのだから。
 
 この自給圏を端的にいえば、「暮らしに必要な資源を、同じ置賜の田畑や森や川に求めることで生活全般の地域自給を高め、あわせて地域経済の再生や健康増進を促進しようとする」ということになろうか。自給圏の対象は大きく分ければ「食と農」、「エネルギー」、「森と住宅」、「学び」の4つだ。
 
 エネルギーは豊かな水や森林など再生可能エネルギーに着目し、地産地消を進める。食は生産者と消費者の距離を縮め、圏内農民の経営安定と安全、安心な食料の安定供給を目指す。住については一般住宅での地元産材の利用を促進する。教育では置賜の優れた歴史と伝統を学び、先人の知恵を今に活かし、ふるさとに生きる誇りを取り戻す。また、一般の人が土や農にかかわる機会を増やし、生き甲斐づくり、健康づくりを通じて医療費削減の世界モデルを構築しようとする。「世界モデル」というのは大きすぎる話しかもしれないが、私たちの気負いとして受け止めてほしい。さらに、この事業は、同じ地域の人と人、人と地域のもう一つの出会いを創りだすこと、地域に根差した新しい文化を創り出すことでもある。」(以下略)



―農民からの手紙(二) 「批判と反対」から「対案」へ


 「TPPに象徴されるグローバリゼーションの中で日本の農業の多くは斜陽産業と化し、農家は果てしなく減少している。数千年の歴史を刻み、多くの人材を世に送ってきた村は高齢化し、その機能すら維持できなくなりつつある。私たちはこの流れに全力で「NO」を訴えてきたが、それだけではもちろん十分ではない。よしんばTPPを潰したとしても、右肩下がりの現状はかわらない。求められているのは「反対」を越えた私たち自身の「対案」であろう。今のようでないもう一つの農を織り込んだ暮らしや地域を築いていく道。 
TPPやグローバル化の中にあっても、なお暮らしていける地域のあり方や人と人のつながり、仕組みを考えて行く。考えるだけではなく、それらを「対案」として実際に築いてこうとすることが求められていると思うのだ。
 
 希望を織り込んだ新しい「対案」を山形、置賜から全国に。この気概をもって置賜自給圏を創造しようと思う。ここで肝心なのは、地域の「総論」は永田町、東京などに握られていて、地域は彼らの幸せづくりの「各論」、「部品」となっているかのような現実があるけれど、地域の「総論」を地域に取り戻し、その上で各論をみんなの力で創りだそうとすることだ。この立場に立つことがこの事業の基本だろう。地域の決定権は地域住民にあるということだ。」(以下略)




―農民からの手紙(三) 対案の前提条件

 「その上に立って、TPPへの道とは違う、もう一つの農業、地域を築く上での前提条件を考えたい。


【前提1】
〝土はいのちのみなもと〟の上に立って
 我々は土に依存して生きる。政治や行政の最大の課題が、人々のいのちと財産を守ることであるとすれば、そのいのちを支える土の健康を守ることは第一級の政治課題でなければならない。この土といのちとの関係を抜きにし、面積、規模、効率性だけを追う市場経済とケミカル農業、その前提の上に立った農業政策はすでに過去のものとされなければならない。目先の経済性よりもいのちの世界を優先させること。土は未来の人たちと共有するいのちの資源。その土の健康を守る。これが前提の第一だ。


【前提2】
国民(市民)皆農を織り込んだ新しい道
 家族農業か然らずんば企業農業かではなく、たとえば、農を志す都会の若者たち、農を織り込んだ暮らしを実現したい市民や、自給的な生活を望む人たちにも広く農地を解放するような仕組み。農民的土地所有(利用)だけでなく、市民的土地利用を可能とするシステムへの転換。望めばできる市民皆農への道作りなどを織り込みながら、新しい生産のあり方、暮らしのあり方を創造する。「自給」、「自立」、「健康」、「福祉」、「医療」、「教育」などを織り込んだ新しい農(土)と人々の関係をもう一つの農地利用の柱として政策化すること。これが前提の第二の条件だ。

【前提3】
自給的生活圏の形成を
 「地域自給」が基本。日本列島の自給はその集合体として考える。地域農業が地域社会に健康な食材を提供し、地域社会が地域農業の農作物を積極的に活用することでこれに応える。農地が近くにあることではじめて実現できる豊かさを地域の中に取り戻すこと。

  当然のことながら農作物を地域外に売ることに反対しているわけではない。それは「外貨」を獲得するうえで必要なことだ。地域ごと自給自足のタコツボに入ろうと呼びかけているわけでもない。そうではなく、地域の田畑と人々の暮らしとをもう一度つなぎなおすことで、本来持っている地域の豊かさを取り戻し、それを全国に開いていこうということである。今までのような産業政策一辺倒ならば、グローバルな市場経済の浸透とともに、地域経済が衰弱し、村の消滅が始まっていくだろう。村の崩壊は日本農業の再生基盤の崩壊につながり、やがて日本自身の崩壊へとつながっていくに違いない。
 
 人々の暮らしと地域の中の田畑が有機的、自立的につながること。これが第三の条件だ。」


―農民からの手紙(四) 

置賜自給圏推進機構の結成へ

 「構想を実現させるにあたって必要なことは、①かつての保守だ、革新だ、あるいは〇〇党だというような政治的な枠組みにとらわれない生活者・住民の事業としての広がりをもち、②市民と関係団体、行政が相互に連携する共同事業として育てて行かなければならないこと。③単なる同好会のような同じ色合いを持つ者同士が集まって、何かをしようとしてもこの構想は実現できない。④それぞれ異なった考え、異なった価値、異なった生き方をしてきたものたちが、相互の違いを認め、尊重しながらつくり上げられていく連携。この中から「自給圏」が生み出されていくということ。
 
 仲間たちとの議論の中では、この構想の必要性に疑問を投げかけたものはだれもいなかったが、実現しようという事業の大きさと、「構想案」を囲んで話し合っている自分たちとの落差に話が及ぶたびに、楽天的な笑いが生まれていた。どんな事業もここから始まる。
 いま、1年間の準備を経て、昨年4月の立ち上げ総会には3市5町の市長、町長を始め、各界から約300人が参加。8月には一般社団法人「置賜自給圏推進機構」として出発し、今は8つの部会において、その現実的な展開に向けて協議が進んでいる。」(以下略)




―農民からの手紙(五)  余計なひと言

 
 「希望はどこかで我々がやってくるのを待っていてくれるということはない。希望はだれかが与えてくれるものでもない。それは自分たちで創りだすものであって、それ以外の希望はけっしてやっては来ない。」(以下略)



 これで手紙は終わりだ。微笑みながら静かに酒を飲んでいる彼の顔をみる。来年度から彼を含む彼の仲間たちが、日々の時間を削りながらの地域づくりが始まっていくのだろう。身体に気を付けてほしい。心からそう思った。彼は「自給圏を作ろうと集まった人たちにはそれぞれに、それぞれの背景や動機があり、物語がある。俺はその中の一人でしかない。でも、すばらしい仲間たちの一員でいることがうれしい。」と繰り返し話していた。

  やがて二人はべろべろによっぱらっていった。家の外は厳しい寒さをともなって、しんしんとふけていく。

———【 髙坂 勝 の トーク 出演情報 】———-


■ 3/7(土) 11~14:00 オーガニックいいね
at 神田MOM TREE

■ 3/11(水) 13:00~ 月刊「高坂勝」
at 池袋たまつき

■ 3/21(土) 13~17:00 脱成長MTG
          「置賜自給圏構想」について
by 菅野芳秀さん

■ 3/21(土) 15~18:00 平井ななえさんとトーク
 「そろそろ人間に戻りましょう! きっかけは農と脳!」

 3/28(土) 14~16:00 at 小平 (詳細未定)

■ 4/6(月) 19 or 20:00 ~ タメになる話し (詳細未定)

■ 7/5(日) ネクスト200年創造学科
by 地球のしごと大學 

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